響の会〔清水寛二・西村高夫〕
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西行桜
曲名: 西行桜《さいぎょうざくら》
作者: 世阿弥
季節: 春(旧暦3月)
場所: 京・西山西行庵
分類: 四番目物・一場
上演時間: 約1時間30分
上演データ: 響の会 第8回研究公演
1999年4月2日(土)
銕仙会能楽研修所
シテ・観世銕之亟(八世)
西行桜
奥善助〔撮影:前島久男〕
●あらすじ
文・清水寛二/西村高夫
 京都、西山に隠棲する西行の庵室。春ごとにここは見事な桜の花にひかれ貴賤群集が訪ねて来る。西行は思う所があって今年はここでの花見禁制を召使いに申しつける。しかし都の人々は例年通り春に浮かれ、この西山に花見のために押しかける。
 西行は一人花を愛で、梢に咲き上がっていく春の花に悟りを求める向上心を見、秋の月が水に姿を映す様に悟りに遠い衆生を教え救う志を思い、そうした自然の啓示がそのまま仏を見、注文を聞く縁となるのだと観ずる。
 花見人たちが案内を乞う。静かな観想の時を破られた西行は、しかし、遙々訪ね来た人々の志に感じ、庵の戸を開かせる。世を捨てたとはいえ、この世の他には棲家はない、どうして隠れたままでいられようかと内省し、「花見んと群れつつ人の来るのみぞあたら桜の咎にはありける」と詠ずる。西行は人々とともに夜すがら桜を眺め明かそうと木陰に休らう。
 その夢に老桜の精が現れる。埋もれ木の人に知られぬ身となってはいるが、心には未だ花やかさが残るといい、先程の西行の歌を詠じ、厭わしいと思うのも人の心であり、非情無心の草木に咎はないと西行を諭す。老桜の精は桜の名所を数えあげ、春の夜のひとときを惜しみ、閑寂なる舞を寂び寂びと舞う。
 やがて花影が仄かに白むうちにも西行の夢は覚め、老桜の姿は消え失せ、老木の桜が薄明かりのなかにひそやかに息づいているのであった。

〔'99/4/2 第8回研究公演 パンフレット掲載〕
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