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曲名: |
雷電《らいでん》 |
作者: |
不詳 |
季節: |
秋・旧暦8月 |
場所: |
近江・比叡山
京都・御所 |
分類: |
切能物・二場 |
上演時間: |
約55分 |
上演データ: |
第14回
響の会
2003年9月27日(土)
宝生能楽堂
シテ・西村高夫
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西村高夫〔撮影:吉越研〕 |
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●あらすじ |
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文・表きよし(国士舘大学21世紀アジア学部教授) |
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比叡山延暦寺の法性坊律師僧正(ワキ)が深夜に天下泰平の祈祷を行っていると、扉を叩く者がいる。不思議に思って物影から様子を窺うと、それはすでに世を去ったはずの菅丞相(前シテ)だった。法性坊が菅丞相を室内に招き入れて自分の行った回向が届いたかどうか尋ねると、菅丞相は師の恩のありがたさを語って感謝の気持ちを表す。やがて菅丞相は、自分は死後に梵天・帝釈の憐れみによって雷となったので、御所に行って自分に辛く当たった公卿たちを殺そうと思うが、御所からお召しがあってもけして行かないでほしいと法性坊に頼む。何度も勅使が来れば断るわけにはいかないと法性坊が言うと菅丞相の様子が変わり、本尊に手向けてあった柘榴を噛み砕いて妻戸に吐きかけると、柘榴は火炎となって扉は燃え上がったが、法性坊が印を結んで火を消すうちに、菅丞相の姿は煙に紛れて消えてしまった。御所から何度も勅使が訪れたので、法性坊が御所に赴くことが能力(アイ)によって告げられる。法性坊が御所で経を唱えていると、黒雲が御所を覆って稲妻が閃き、雷神(後シテ)となった菅丞相が現れる。生前は帝の御恩を蒙る身だったのだから御所で暴れるのは良くないと法性坊が声をかけると、師であっても容赦しないと言って雷神は御所の中を暴れ回る。雷神は法性坊を避けるかのように御所の中を移動しながら暴れるので、それを何とか静めようと法性坊も雷神を追っていく。そうこうするうちに、法性坊が唱える陀羅尼の効果と帝から天満大自在天神の位が贈られたことにより、ようやく心を静めた雷神は、黒雲に乗って空のかなたへと姿を消すのだった。
〔'04/9/14 第14回 響の会 パンフレット掲載〕 |
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●解説 |
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文・表きよし(国士舘大学21世紀アジア学部教授) |
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『北野天神縁起』などを題材とする作者不明の五番目物。優れた才能を持ち右大臣にまで出世した菅原道真だが、道真を妬む藤原時平の策略によって九州の大宰府に左遷され、九〇三年(延喜三)に大宰府で没した。道真の死後、その恨みが様々な祟りをなすと恐れられ、道真は天満天神として祀られることになるが、その経緯が『北野天神縁起』や『太平記』巻十二などに描かれており、それらを題材として室町後期に作られたのが本曲である。江戸時代に加賀藩に重用された宝生流では、前田家が菅原道真を祖とすることから、雷神となった道真が暴れ回る後半部分を改作して道真が神姿で登場する形とし、曲名も〈来殿〉と表記している。師弟が再会してしみじみとした雰囲気が漂いながらも頼みが聞き入れられないとシテが様子を一変させる前場、シテが激しく暴れ回りながらも師に対する遠慮をうかがわせる後場ともに、荒々しさと気品とを合わせ持つ道真をどのように演じていくかが見所となる作品である。
〔'04/9/14 第14回 響の会 パンフレット掲載〕 |
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