響の会〔清水寛二・西村高夫〕
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皇帝
曲名: 皇帝《こうてい》
作者: 不詳
季節: 春(旧暦3月)
場所: 唐(中国)・長安皇宮
分類: 切能物・二場
上演時間: 約50分
上演データ: 第19回 響の会(予定)
2008年6月21日(土)
宝生能楽堂
シテ・清水寛二
皇帝
故観世寿夫〔撮影:観世写真部〕
●あらすじ
 唐の開元年中、玄宗皇帝の御代。皇帝の寵妃 楊貴妃は重い病の床につき、明日をも知れぬ命である。貴妃の病床を見舞った皇帝が、夜靜まった後、病を気遣って思いに耽っていると、不思議な老人が階下に現れる。老人は伯父の御時に、科挙の試験に合格せず、及第の叶わぬ身を嘆き、玉階に頭を打ちつけ、自らの生命を絶った鍾馗という者の亡心と名乗る。その時、亡骸を都の内に埋葬され、贈官された上に、緑袍を頂戴したその旧恩に報いるために、貴妃の病をいやしてみせようと現れたのであった。そして、明王鏡という鏡を貴妃の枕辺に立てるなら、必ず姿を現そうと約束して消える。
 貴妃の病床を見舞った皇帝は、余りの痛々しい様子に、代われるものなら代わりたいと嘆き、二人の契りの永遠ならんことを願う。その時ふと、不思議な老人の言葉を思い出す。やがて夜が更けると、貴妃の枕頭に立てた鏡に病鬼が姿を現す。貴妃の玉笛を取り去ろうとするのを、鏡に映し見て、皇帝が剣を抜くと、病鬼は御殿の真木柱に隠れてしまう。すると御殿がにわかに光り輝き、その中に鍾馗大臣の精霊が駒に乗って現れる。病鬼はこれを見て驚き騒ぎ逃れようとするが、精霊が利劒を抜き袂をかざして明王鏡に向かうと、病鬼は逃れる術もなくその姿を現す。通力を失った鬼神が御殿を飛び下り六宮の玉階に走り上がったところを、精霊は、引き下ろし利劒でづたづたに斬り裂き、庭上に投げ捨てる。貴妃の病も治り、君の恵みの久しからんことを祈って、精霊は夢のように消え失せる。
 玄宗が病気の時、夢に現れた一小鬼が楊貴妃の玉笛を盗もうとすると、時に一大鬼が現れ退治する。その一大鬼は身は終南山の進士鍾馗であると言終って夢から覚めたという故事に基づいて作られた能である。鍾馗様と謂えば日本でも端午の節句の代表者であるが、病鬼との豪快な闘いは六月の梅雨空を吹き払うことでしょう。

〔'67/6/9 銕仙会6月例会 配布『銕仙』150号掲載のあらすじを修正・加筆〕
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